人の注意力頼みにしないために:「逆ケンタウロス」とリサーチ発信
作家のコリイ・ドクトロウは、人と機械の協働を考えるうえで示唆に富む言葉を使っています。自動化理論でいう「ケンタウロス」とは、機械に支えられて働く人のこと。その逆の「逆ケンタウロス」は、いわば人間の体に機械の頭が乗った状態で、機械に支えられるのではなく、機械に仕えて働く人を指します。1
ドクトロウが挙げる例のひとつが、とても追いつけないペースでAIの診断を承認するよう求められる放射線科医です。AIが腫瘍を見落としても、診断書に署名しているのはその医師です。ドクトロウは、この医師の本当の役割は「AIの仕事を監督することではなく、AIのミスの責任を負うこと」だと指摘し、ダン・デイヴィスの言葉を借りて「責任の吸収源(accountability sink)」と呼んでいます。
リサーチ発信にも同じ落とし穴
エクイティリサーチに携わったことのある方なら、この構図に覚えがあるはずです。締め切りに追われながら、2つの言語でレポートを発信する。数値は業績モデル、会社の開示資料、図表と一致し、互いにも整合していなければなりません。どこかに、桁の入れ替わった数字や古い目標株価、「弊社」とすべきところの「当社」が紛れ込んでいるかもしれません。
これまでは、その答えは人でした。翻訳者がすべての行を読み、SAや審査担当者がすべての数値を確認する。原稿作成にAIを取り入れても、同じ人がより多くの文章をより速く確認するだけなら、構図は変わりません。しかもドクトロウが指摘するように、AIの誤りはもっともらしく見えるため、最も見つけにくい種類の誤りです。2
複雑な文書の細部すべてに、人が常に気を張って目を光らせる。それは適切な役割分担ではなく、責任転嫁です。
本来の役割分担へ
私たちが目指すのは、責任を一方からもう一方へ移すことではなく、ソフトウェアと人、それぞれの強みを生かすことです。疲れを知らない網羅的な確認はソフトウェアが得意とし、判断は人が得意とします。
当社の製品は、この役割分担を前提につくられています。
- AI翻訳エディタは、日本語と英語で一致しない数値や用語をハイライトし、原文にない企業名を警告します。翻訳者が一行ずつ探す必要はありません。
- レポート事前チェックアプリセコンドは、原稿のすべての数値を業績モデルやTDnet・EDINETの開示資料と照合し、ハウススタイルと審査ルールを適用してから、レポートを審査に回せるようにします。
どちらの製品でも、すべての指摘には理由が示され、どう対応するかは人が決めます。確認するのはソフトウェア、判断するのは専門家です。
リサーチ向けのAIツールを検討する際には、ぜひひとつ問いかけてみてください。確認しているのは誰か。そして、責任を負わされるのは誰か。
株式会社センティエンス 代表取締役 ガレス・エドワーズ
Footnotes
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Cory Doctorow, “The Reverse-Centaur’s Guide to Criticizing AI”, Pluralistic, 2025年12月5日(英語) ↩
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Cory Doctorow, “‘Humans in the loop’ must detect the hardest-to-spot errors, at superhuman speed”, Pluralistic, 2024年4月23日(英語) ↩